雑記

ひとりごと

ウェスティン東京


今日は恵比寿にあるウェスティンホテルで商談があった。

午前中は別の仕事で晴海へ出向いていて、そこで昼食も振る舞われたから、商談の予約時間にはかなりギリギリで恵比寿へと向かった。

うまいこと電車を乗り継いで、間に合うかどうか、先方に遅刻の一報を入れるかどうかの瀬戸際ってところで事件は起こった。

恵比寿でタクシーを拾ったんですけど、遅刻ぎりぎりだからね、息を切らしながら「ウェスティンホテルまでお願いします、ウェスティン、」って運転手さんに伝えたわけ。
歩いて5分の距離なのにタクシーを使うのも忍びないなあと思いつつ、刻一刻と迫る商談の時間、背に腹はかえられない。
運転手さんも愛想の良い人で、「大通りは混むから、少しガタガタするかもしれないけど、裏道を通って近道しますからね」と、タクシーは出発。
ああ、これならなんとか間に合いそうだ、とホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。

何かがおかしい。

恵比寿駅から歩いてすぐの距離にあるはずのホテルなのに、恵比寿駅からどんどん遠ざかっている気がする。
裏道を通って行くとは言っていたけれど、裏道?これ裏道?

そのまましばらく走って、タクシーは渋谷駅の新南口の前でピタリと止まった。

「お客さん、この並びですけど、どうします?目の前まで行きます?」

しかしウェスティンホテルらしき建物はどこにも見当たらない。
この通りにウェスティンホテルがあるの?


いや、ないだろ。
その前にここ恵比寿じゃないだろ。


「あの、どれがウェスティンホテルですか?」

「え?」

ウェスティンホテル

「え、お客さん、メッセっておっしゃったじゃないですか!」

 

 


お、おっしゃってねえーーーよ!!!!!


じゃあまず聞くけどメッセってなんだよ!!!???

 

 


時計の針に目をやると、商談の予約時間まであと8分。
喉元まで出かかった言葉は飲み込むことにして、
「ホテルの、ウェスティン・東京までお願いします。」
やっとの思いで再び絞り出す。

 

Uターンするタクシーの車窓から、小汚い渋谷の街並みを眺め、モヤモヤとした感情が渦を巻く。

なんか……なんか、さっきの発言、おかしくない?

 

『え、お客さん、メッセっておっしゃったじゃないですか!』

 

言ってないぜ。

 

聞き間違いをしてしまったことは責めないよ。
なんなら私の滑舌が悪かったのかもしれない。
運転手さんに悪気があった訳でもないし、うっかり渋谷に連れて行かれたくらいでは、焦りこそしても、怒ることはない。

でも『メッセっておっしゃったじゃないですか!』という発言は、
“メッセと聞こえてしまった自分の聞き間違いの可能性”を全否定し、かつ、私が“ウェスティンと言ったこと”さえ否定している。
私が“メッセ”という謎の施設へ行きたがっていたことになる。

だからそもそもメッセって何?幕張?それなら着く前に分かるわ。高速入る手前くらいで分かるわ。

結局渋谷の“メッセ”が何なのか分からないまま、遠回りしたぶんのタクシー代金をきちんと払って、当初の正しい目的ウェスティンホテルに到着したのでした。


渋谷のメッセ、検索しても出てこなかったから、結局何だったのかは分からずじまい。

次は運転手さんに滑舌よく伝えよう。

 

「メッセまで、連れていってください」って。